本を読む人だけが手にするもの

著者:藤原 和博
発行元:日本実業出版社
2016年9月発行

「本を読むメリットはなんですか?」
そう聞かれて、即答出来る人は少ないと思います。
この本ではその「本を読むメリット」について言語化されており、私達がどういった心持ちで読書をすべきかのヒントが散りばめられています。
読書のモチベーションが上がること間違い無しです。

著者は著書「100万人に1人の存在になる方法」や、「東京都で初の民間人校長」としても有名な藤原 和博さんです。
藤原さんの「時給100倍の謎」を議題としたセミナーは、私のキャリア観を大いに震わせる内容でした。

なんで本を読む必要があるの?

本書では「20世紀型の成長社会から、21世紀型の成熟型社会にシフトしたから」というのが挙げられています。
20世紀型の成長社会は1950半ば〜1997、日本の高度経済成長期には「良い大学を出て、大企業に就職さえすれば、会社が死ぬまで面倒を見てくれる時代」でした。
会社が自分の将来を担保してくれるため、「念願のマイホームを35年ローンで買う」という無茶な借金も許されました。

今はどうでしょうか。
2017年、三菱UFJは9500人、三井住友は4000人、みずほは1万9000人と、メガバンク各行は大規模なリストラ計画を発表しました。
2018年後半〜2019年前半の半年間の短い内に、コカコーラ・キリン・日本ハム・NEC・エーザイ・カシオ・アルペン・千趣会・光村印刷・富士通…といった東証一部上場の大企業が、 45歳以上の早期退職者を募りました。
2019年4月、経団連会長である中西宏明氏が「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。」と打ち明けました。

https://newspicks.com/news/2628693/body/

ここ三年の間に、「会社が私達を守ってくれる」と考える能天気な日本人は大分数を減らしたんじゃないでしょうか。
ただやみくもに自宅と会社を往復していても安定した人生は約束されません。
これからは「特定の分野に頭抜けて特化した人間」と「1つの分野に絞られず、マルチに活躍出来るイノベーティブな人間」が生き残る時代です。
それこそが「21世紀型の成熟社会」なのです。
そういった時代に私達は生きていることを自覚した上で、「ではどんなスキルや考え方を持てば良いのだろう?」を思考を巡らす必要があります。

その答えとして、本書では「読書こそが人生を切り拓くための最良のツールである」と述べています。

読書を習慣づけて「希少な人材」となれ!

藤原さんの著書に「藤原和博の必ず食える1%の人になる方法」という本があります。
「稼げる人になるためには、100人に1人を目指せ」というのが主題です。
そして、下記の3つを心がけることで少なくとも「8人に1人の人材になれる」と明記しております。

  • パチンコをしない
  • 携帯ゲーム(ソシャゲ)をしない
  • 読書をする

パチンコは明らかに非生産的な行為であり、する人は時間をマネジメントする能力が決定的に欠如しています。まずパチンコをしないだけで2人に1人の人材になれます。
また、携帯ゲームも四六時中やっている方に関してはパチンコと同義であり、この2つをやらないだけで4人に1人の人材となれます。

これまでは最低限のレベルで、問題は「この2つに浪費しない時間を何に充てるか」ということです。
それが「読書をするか、しないか」という視点となります。

「21世紀型の成熟社会」では、教養が大事となります。
教養は、読書をすることなしに得られるものではないと本書では述べています。
2019年の文部科学省の調査によると、「一ヶ月に一冊も本を読まない日本人」が47.3%だということが分かっています。
今の時代には読書をすることが必須な項目であり、上2つに加えて読書をすることで8人に1人の希少な人材になることが出来ます。
この3つをクリアするだけで、上位10%の階層に入れるのであれば、やらない手はありませんね。

読書で身につく2つの力

本書では、読書をすることで自分のやりたいことを実現させる上で大切な2つの力が身につくと述べています。
それは「集中力」と「バランス」です。

才能豊かな人や有能なビジネスパーソンに数多く会ってきた著者の経験上、「集中力」は成功した人やユニークなことをやって注目を集めている人に例外なく身についている能力だと言います。
勉強やピアノ・サッカーの練習などでも身につきますが、本書では「読書こそが集中力を磨く有効な手段」として挙げられています。

もう一つの「バランス感覚」とは、「自分と地面(地球)、自分と家族、自分と他者など、世の中全体と自分との適切な距離感を保つことが出来る能力」のことです。
バランス感覚が欠如すると生活する上で様々な支障をきたし、特に対人関係に大きな影響を及ぼします。
ちょっと仲良くなるとベタベタする、逆に些細なことで絶縁状態になるなど、ゼロイチで判断する様になり、微妙な「間」や「距離感」という曖昧な関係を保つことができなくなります。
そうすると、何をするにしても極端な方向へ進みかねません。
読書は他人が体験したり調べたりした知見を獲得する行為です。
読書を通して自分の世界観を広げ、様々な視点から物事・他人を見ることが出来る様になり、人格的包容力や寛容の基礎ともなり得ます。

これからの時代に必要なのは「情報編集力」

成長社会では「ひとつの正解を導き出す情報処理力」が求められた一方で、21世紀の成熟型社会では「身につけた知識や技術を組み合わせて納得会を導き出す情報編集力」が重要となると著者は述べています。
情報編集力は下記の5つのスキルに細分化することが出来ます。

コミュニケーションする力 … 相手に対して自分のクレジットを高め、より質の高い情報を聞き出す能力のこと。人の話をよく聞くためのスキル。1つのジャンルに囚われず、先入観を排した乱読をすることで身につけられる。

ロジックする力 … 他者の納得解を理解する、もしくは自分の納得解を他者に理解してもらうためのスキル。成熟社会では様々な価値観を持った人々を共存しながら生きていかなければならない。自分の行動・思考に筋が通っているかを常に意識すること、また、物事を相手の論理で考えてみることで身につけられる。読書は「論理を理解しようと努める行為の連続」であるため、非常に有効な手段と言える。

シミュレーションする力 … 自分のアタマの中でモデルを作り、試行錯誤しながら確かめていくスキル。常に先を予測して行動することで身につけられる。読書から得られる知識は予測する上での判断材料として必須なものである。SFや推理小説などは予測することを常として楽しむものなので、このスキルを身につける上ではうってつけの題材となる。

ロールプレイングする力 … 他者の立場になり、考えや想いを想像するスキル。社会における他者の役割を効率的に学ぶことが出来る様になる。物事を他者の視点から見られると世界観が広がり、思考が柔軟になる。これらも読書を通し、事件や歴史上の登場人物の思考・気持ちを追体験することで身につけることが出来る。

プレゼンテーションする力 … 相手とアイデアを共有するためのスキル。多様な考え方が共存する成熟社会では、自分の考えを他人にも分かるように表現することは必須である。このスキルを身につけるには「他者」をイメージし、他者は自分とは別の世界観に生きていることを理解する必要がある。そのためには「どれだけ多くの他者の考えに触れてきたか」が重要となる。これらも読書による他者の考えの理解、経験の追体験を通すことで養われる。

情報編集力を高めるもう一つのスキル、「クリティカル・シンキング」

以上の5つのスキルに加え、「複眼思考 -クリティカル・シンキング-」(批判的思考力)も情報編集力を高める上で必須の考え方です。
要するに「自分のアタマで考えて、主体的な意見を持つ」という態度が必要となります。物事を多面的に考えることで、フェイクニュースや悪意のある他者からの情報に踊らされることも無くなります。そうして質の高い情報のみを仕分けてインプットすることで、自分の考えをブラッシュアップし、多様な考えを持つ他者との円滑なコミュニケーションに役立てることが出来るでしょう。

このスキルを身につけるには、「道徳としての読書」から抜け出す必要があります。多くの人が義務教育で体験したかと思いますが、国語の時間は道徳とさほど変わりません。特定の権威者が決めた課題図書を読み、「正しい読書感想文」を書くことを目標に据えていたかと思います。
他の先進国の国語の時間は日本と異なり、クリティカル・シンキングを鍛える傾向にあります。なぜなら、他国の国語は「ディベート」が主となるからです。クラスメートの納得解を通じ、「そういう考えもある」と受け止めながら、「自分だったらどう思うか?」を自問自答しながら読書を進めていきます。
多様な意見を戦わせることで脳のシナプスが活性化され、「他者の納得解の理解」「自分の納得解を他者に理解させる」スキルを身につけることが出来ます。

雑感

日本では1ヶ月に1冊も本を読まないという人が47.5%もいるという統計があります。
アメリカの大学では年間読書冊数が100冊を超えるところも珍しくありません。
日本で「大学は人生の夏休み」と揶揄されることが多い一方、アメリカでは「大学は最も戻りたくない地獄」と言われることが多いです。
実際、日本とアメリカのエリート層の知識量の差は、18歳までは日本優位、それ以降はアメリカのエリート層に大きく離されるという統計もあります。
グローバル市場主義が進む現在、個人個人が国内だけで市場価値を測る時代は過ぎ去りつつあります。
本作は読書が習慣付いている人の優位性がよく理解出来、こうした社会の中に必要なエッセンスが詰め込まれている良書だなぁと感じました。